シンプルを極める! ペペロンチーノの奥行き



前回の投稿「引き算の美学!進化するペペロンチーノ」に、ペペロンチーノの作り方や素材による特徴をまとめておこうかと思いましたが、記事が凄く長くなってしまいそうでしたので、こちらに記しておきます。ご自身の独自のペペロンチーノ作りのご参考になれば幸いです。


1: 麺

パスタの成形方法は、おおまかに三種類あります。パスタマシーンによってカットされた生パスタ。テフロン加工が施された口金から押し出されたパスタ(乾麺)。伝統的なブロンズダイスという口金から押し出されたパスタ(乾麺)があります。

生パスタはもちもちしていて強いソースとの相性がよく、テフロンダイス系のパスタはつるつるしていて、口当たりが滑らかです。伝統的なブロンズダイス系のパスタは表面に凹凸が多く有り、ソースと良く絡みます。テフロンダイスの代表格はバリラ。ブロンズダイスの代表格はディチェコです。ペペロンチーノの場合、スパゲッティー(直径1.9mm前後)を用いるのが一般的です。

2: にんにく

普通に流通している中国産のにんにくは水分量が少ないので仕上がりが早くなります。にんにくの水分量が少ないと油との馴染みがよく、逆に言えば焦げやすい。対極的に青森産は瑞々しく、焦げにくく、厚切りやすりおろした時に真価を発揮するように思います。

にんにくの芯は焦げやすいので外すことをお勧めします。にんにくの形状による違いとしては、みじん切りにすると素早く火が通る代わりに焦げやすく、輪切りはみじん切りに比べて焦げにくい。潰したにんにくはオイルから取り除きやすくなりますが、味と香りを十分にうつすとなると、輪切りやみじん切りよりも量が必要になります。

仕上げににんにくのすりおろしを加えてから乳化させる方法では、にんにくの香りが甘く感じられ、若干の辛味がパスタを複雑な味わいに導きます。私的には好きな作り方ですが、この方法の重大な欠点は、にんにくの後味がしつこく口に残ることです。いずれにせよ、にんにくが生に近いと後味が悪くなります。

にんにくを褐色になるまで焼く方法では、香ばしさがアクセントとして加わります。焼きすぎると苦くなりますので注意が必要です。少し厚めの輪切りにしておくと、表面は香ばしく、内部はほくほくとした仕上がりにすることもできます。

他にはボールにオリーブオイル、刻んだにんにくと唐辛子を入れ、100度以下の湯煎で30分加熱するという方法があります。このようにすると唐辛子もにんにくも焦げず、にんにくと唐辛子から成分をしっかりと引き出せます。100度以下でにんにくを加熱することにより、薬理作用が向上するとも言いわれています。

アホエンは,抗血栓作用,抗菌作用,抗ウィルス作用,コレステロール低下作用,血小板凝集抑制作用,抗腫瘍作用を持つことが報告されており 8~13),ニンニク由来の含硫化合物の中でも特に強い健康増進作用を持つことが知られている。

…生ニンニクのホモジェネートをこめ油中において4時間加熱処理し,抽出後に E- および Z-アホエンを HPLC によって定量した。その結果,E- および Z-アホエンともに 80℃の加熱処理によって最も多く生成した。最大生成量は,E-アホエンが 172.0 ng/g of garlic,および Z-アホエンが 476.0 ng/g of garlic であった。しかしながら,0℃と100℃の処理によってはアホエンの生成は全く認められなかった。

財団法人浦上食品・食文化振興財団 ニンニクの健康増進作用を増強させるための加工・保存技術の開発 赤川 貢(大阪府立大学大学院生命環境科学研究科)

2: オイル

EXVオリーブオイルを使用するとフルーティーな仕上がりになり、ピュアオリーブオイルを使用するとあっさりとした仕上がりになります。EXVは加熱するとその豊かな香りが飛びやすいので、加熱にはピュア、仕上げにエクストラという使い分けが合理的かもしれません。私はEXVオリーブオイルの味が好きなので、加熱(100度以下)も仕上げもそれでおこないます。どのようなオイルを使うにせよ、乳化がしっかりとおこなわれないとマウスフィールが重たくなります。茹で汁とオイルをゴムベラや箸、トングなどを使ってしっかりと撹拌し、ソース状に近づけることをお勧めします。なお、どのようなオイルでもいずれは酸化してしまいますので、使用頻度に合わせたサイズのオイルを購入し、酸化が進む前に使い切ると良いでしょう。

3: 唐辛子

唐辛子の形状は細かい程、成分が短時間で抽出でき、乳化に有利になります。その代わりにパスタの口当たりが多少ざらつきます。輪切りや粗い粒の唐辛子でしたらシノワでこしやすくなります。唐辛子は焦げやすいので火力には充分気をつけて下さい。唐辛子も産地によってさまざまな味わいがありますので、お好みの唐辛子を探してみるのもよいかもしれません。韓国産の唐辛子は辛味が穏やかですので、激辛系が苦手な方にお勧めです。

4: 茹で汁の塩分濃度

ペペロンチーノの仕上げに茹で汁を使用する場合は、茹で汁の塩分濃度は1%程度が扱いやすいと思います。茹で汁の塩分で、全体に塩味を馴染ませておくと仕上げが楽になります。パスタの食感にこだわりたい場合は、2%以上で茹でてからお湯ですすぐという方法もあります。

...つまり、パスタをゆでるときの一般的な塩の量である、1リットルに対し6〜10グラムでは、パスタの物理的な味に影響はない。しかし、塩分を強めにして、25グラム程度以上入れれば、デンプンの糊化を抑制し、その物理的な味をはっきりと変化させることができるのである。

HONZ 【連載】『男のパスタ道』第2回 パスタをゆでる時の塩とアルデンテの本当の関係について

5: イタリアンパセリ

本場イタリアではペペロンチーノにイタリアンパセリを合わせることが一般的のようです。しかし、必須ではありません。パセリが小麦の香りの邪魔をする、という感じ方もあるかと思いますので。

飾りでよく用いられるパセリ(カーリーパセリ)を味覚センサーで分析すると、イタリアンパセリとほとんど違いがなく、歯触りのかたいパセリ(カーリーパセリ)を約30秒間炒めると、葉が柔らかくなり美味しく感じられるようになるという裏技がウェブ上にあり、何度か試しました。パセリは比較的熱に強いハーブですので、炒めても香りを大きく損失することはなく、歯触りも良くなりましたので、確かにこの方法は有効だと思いました。イタリアンパセリが手に入らなかった場合に試してみるのも良いでしょう。