引き算の美学!進化するペペロンチーノ




基本原則としてにんにく、オリーブオイル、唐辛子、パスタだけで構成される料理、ペペロンチーノ(aglio olio e peperoncino)。シンプルなだけに料理人の技量がストレートに反映される料理ですから、難しい反面、研究しがいのある課題でもあると思います。

私もペペロンチーノに関しては様々な方法を試しました。茹で汁とオリーブオイルを泡立て器で撹拌したり、色々な品種の唐辛子を使ってみたり、またそれらをブレンドしてみたり、サラダ油だけで仕上げたり、最後におろしにんにくを加えて乳化させたりと。しかし、結局いきついた答えは「素材以上の味を頑張って捻り出そうとしても徒労に終わる」でした。

それから時を経て昨日、グーグルイタリアでペペロンチーノについて見てまわっていたところ、イタリアンパセリを使用したレシピが圧倒的に多かったので、イタリア人の友人にメッセンジャーでそのことについて確認をとると、本場ではペペロンチーノに新鮮なイタリアンパセリを合わせるのはごく一般的だそうです。

そしてその検索の最中に偶然にも、非常に興味深い調理法を発見しました。それが冒頭の動画、ミラノで活躍する料理人、アレッサンドロ氏(Alessandro Negrini)によるペペロンチーノです。何が興味深いのかと言えば、にんにくの持ち味を引き出すのではなく、にんにくを茹でることによって素材の強い味わいと香りを落ち着かせているところです。伝統を継承しつつ、限られた材料の中でさらに引き算を用いる発想が素晴らしいと思いました。そしてその茹でたにんにくに水とオリーブオイルを加え、ハンドブレンダーで乳化させ、シノワ(こし器)でこしてからスパゲッティーと絡めています。ペペロンチーノにはまだまだ進化の余地があったようです。徒労に終わっている場合ではありませんでした。それではアレッサンドロ氏によるペペロンチーノのレシピをみてみましょう。

4人前

イタリアンパセリ 40g
赤にんにく 6片
カイエンペッパー 2g
スパゲッティー(1.7mm フェリチェッティ社) 350g
EXVオリーブオイル(コラティーナ種) 100g
沸騰したお湯1リットルに対して8gの塩(塩分濃度を0.8%にする)
天然水 100ml
塩 適量

このレシピではカイエンペッパーを用い、パスタの茹で汁ではなく天然水を使用するところが特徴的です。にんにくを茹でることによって大味に傾くのを避けつつ、そのにんにくで乳化を安定させるという合理性。更にそれの舌触りをより良くする為にシノワでこす配慮が素敵です。このレシピを基軸に様々なアレンジも思い浮かびそうです。

最後にこのレシピに登場するスパゲッティーについて触れておこうかと思います。このスパゲッティーは以前の記事「ローマの有名人シェフ達によるカルボナーラレシピ」内で紹介した「キング オブ ザ カルボナーラ」の異名を誇るシェフ、ルチアーノ氏が使用しているものと同じフェリチェッティ社のMonogranoシリーズのブロンズダイス系パスタです。

このパスタ Monograno シリーズに使用している小麦は、世界の生産量2%以下と言われている遺伝子学的にクリーンな品種改良されていない原種(古代種)です。

...小麦に関しては、原種の小麦と品種改良された物はミネラル分が2~3割も違ってしまっています

...「自分たちのできることを徹底的にこだわり世界で一番のパスタを作る!」というのが、 リカルド社長のお爺さんからの夢だったそうです。その精神で作ったパスタは食に関してめっぽう頑固で保守的なイタリア人を唸らせ、会社は段々大きくなり、創業100年目を迎える2008年にお爺さんの時代からの夢であった “世界で一番のパスタを目指したMonogranoシリーズ”をつくりました。

株式会社il Bianco 原種の小麦粉を使用して作られたフェリチェッティ社の乾燥パスタ