ローマの有名シェフ達によるカルボナーラレシピ


今回はローマ発祥とされるカルボナーラについて書くうえで、カルボナーラの歴史をウェブ上で調べると意外にも情報が少なく、第二次世界大戦後にようやく文献として現れたということぐらいしかわかりませんでした。イタリア版のWikipediaも覗きましたが、成り立ちがはっきりとしません。

次にレシピですが、実際にイタリア人女性の友人に聞いたところ、生クリームは入れないということを断言しておりました。用いる肉に関してはパンチェッタだと言うので、私がグアンチャーレではないのかと尋ねると、それはどちらでもよいとのこと。チーズはペコリーノロマーノやパルミジャーノレッジャーノ。私が勝手に認識している本場の作り方と大きな差異はありませんでした。

しかし、イタリア版グーグルでカルボナーラのレシピを見てゆくと、生クリームを使うものも少しだけ見受けられ、場合によってはチーズはパルミジャーノのみ、というものも。卵は卵黄のみを使うものがほとんどですが、全卵を用いる方もちらほらいらっしゃる。これは日本で言うところのお雑煮に何を入れるのか、という話に近いように思います。それでも、カルボナーラの体系ははっきりと浮かび上がります。「パスタ、卵、チーズ、熟成した豚肉、黒胡椒、場合によって生クリーム」。このような身近な材料で構成されているということです。カルボナーラは濃厚な為、スパゲッティーより太い麺を用いるレシピが多く見受けられ、手順もだいたい以下のようなものがほとんどでした。

1: 塩入りの沸騰したお湯にパスタを入れて茹でる
2: フライパンにオリーブオイルを引いて、熟成肉をじっくり炒める
3: パスタが茹で上がる手前でフライパンの火を止める
4: パスタをフライパンに入れ、卵黄とチーズを加えて混ぜる
5: パスタの茹で汁でかたさを調整する
6: 仕上げにチーズ、胡椒を振り掛ける

仕上げはフライパンではなく、冒頭の動画のようにボールを湯気で温めながら行うレシピもありました。私もフライパンでカルボナーラを作る際に、卵黄に熱がまわり過ぎでソースの質感が悪くなるという失敗を何度か経験し、それからはパスタが冷めない程度にボールを温めておいて、材料全てをからめた後に必要であれば湯煎をするようにしています。その方が卵黄の固まり具合をコントロールしやすいと思います。

それでは冒頭に掲載した動画の登場人物、「キング オブ ザ カルボナーラ」の異名を誇るルチアーノ・モノシリオ氏のレシピを見てみましょう。

食材 4人前

スパゲッティー 280g
卵黄 4個
グラナパダーノすりおろし 30g
ペコリーノロマーノすりおろし 20g
黒胡椒 10g
1㎝角のグアンチャーレ 200g
ペコリーノロマーノすりおろし 20g (仕上げ用)

原文を引用しておきます

Ingredienti per 4 persone

spaghetti, g 280
4 tuorli d’uovo
grana grattato, g 30
pecorino grattato, g 20
pepe macinato, g 10
guanciale tagliato a cubetti da 1cm, g 200
pecorino, g 20.

YouTube Spaghetti alla Carbonara - la ricetta originale di Luciano Monosilio

このレシピではグラナパダーノを用いるところが特徴的であり、塩を使わずに素材だけで塩味をきめるのがプロに共通するポイントです。ルチアーノ・モノシリオ氏は「King of the Carbonara...」のインタビューで、卵黄は65℃を超えないようにと言及しておりました。卵黄の質感がカルボナーラの運命を左右するということです。

...この状態ではまだ卵黄は固まらない。ここからさらに温度をあげて、65度~70度の間で保持すると卵黄が凝固しはじめる。

Kyoto Kitcho ■卵が固まる温度について 青山学院大学教授 福岡伸一

続いて、ローマの伝統料理を重んじるローマの名店「リストランテ アルカンジェロ」のシェフ、アルカンジェロ・ダンディーニ氏のレシピを覗いてみましょう。

食材 4人前

ペンノーニ (ペンネリガーテを大きくした形状のパスタ) 400g
卵黄 4個
ペコリーノロマーノ 80g
パルミジャーノレッジャーノ 40g
グアンチャーレ 60g

原文を引用しておきます

Ingredienti per 4 persone

400g "Pennoni del pastificio dei campi"
4 tuorli d'uovo
80g di pecorino
40g di parmigiano
60g di guanciale

Luciano Pignataro Wine Blog La Carbonara di Arcangelo Dandini: amen!

私が調べた中で胡椒を振らないのはこのレシピだけでした。チーズは「ペコリーノ 2 : パルミジャーノ 1」のバランス。オイルはいっさい使わず、グアンチャーレの油脂だけで油分をまとめているのは最初にご紹介したルチアーノ氏と同じようです。仕上げ用のチーズの分量は明記されておりませんでした。しかし、パルミジャーノは溶かさないとクリーミーなパスタにとっては中途半端な質感になりそうなので、おそらく仕上げはペコリーノのみだと思います。

レシピを二つご紹介しましたが、一つだけ注意点が有ります。それはチーズや熟成肉はブランドや個体によって塩分が同じではないということ。プロのレシピだからといってそのままのバランスで作ると塩辛くなる可能性があります。グアンチャーレを塩辛く感じた場合は食事中に外せますが、チーズは一度からめたら取り除くことが出来ませんので、初めて作る場合はレシピに書いてあるペコリーノロマーノ全てを混ぜない方が無難だと思います。食事中に後から足すことが出来ますから。

それでは最後に、10年連続でミシュランガイドの三ツ星を獲得しているローマのレストラン「ラ・ペルゴラ」の総料理長、ハインツ・ベック氏が放つ、先鋭的かつエレガントなカルボナーラの作り方をご覧下さい。





伝統を継承しつつカルボナーラを生パスタの内部に閉じ込める。ありそうでなかった発想に驚くばかりです。この方法でしたら食事中に起こる「ソースの乾燥とチーズの再凝固」という反応を和らげることが出来ますので、終わりに近づくにつれマウスフィールが重たくなるというカルボナーラの弱点を解消できることでしょう。斬新かつシンプル。とても素晴らしい調理法だと思います。映像を見れば作り方はだいたい解るはずですが、それでも念のためにざっくりとした日本語の補足をしておきます。

ボールに入れた卵黄を撹拌しながら湯煎で温め、泡立てる。そこにペコリーノロマーノ、胡椒(おそらく白胡椒)、泡立てた生クリームを混ぜ、冷蔵庫で30分冷やす。それを絞り袋に入れ生パスタの上に絞り出し、挟み込んでからカットする。それを塩の入ったお湯で茹でる。

火にかけたフライパンにティースプーン1杯分のオリーブオイルを引き、グアンチャーレ(それが手に入らない場合は、パンチェッタでも代用できる)を炒める。次に角切りのズッキーニを入れ、フライパンを火から離してスプーン2杯分の白ワイン、少量のパスタの茹で汁を加え、フライパンを火に戻す。そこに茹で上がったパスタを入れ、ペコリーノを振りかけ軽く和えたら出来上がり。

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